这条路
作者:wskydr
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最終話 斤木かえで ♯ 「かえで、久しぶりだな」 「そうだね。もうずいぶん長く会ってない気がするよ」 お互い、物心ついてからほとんど毎日顔を合わせていただけに、一ヶ月ほども別れてからの再会には奇妙な懐かしさがあった。 言うべきことはいくつか考えてきた総太郎だったが、まず妹の格好について言及せざるを得なかった。 「にしてもお前、その格好は……」 彼女は、見慣れた学生服を身につけていたのだ。それも、かえでが通っている学園の制服ではない。 「そう、お兄ちゃんが持ってたミリエラの制服だよ。もらってからクリーニングして、その後は毎日袖を通してたから、もう完全に私の制服って感じになっちゃってるけどね。前の持ち主だった女の匂いを消し去りたかったんだ」 かえでは制服姿を誇示するかのように、しなを作ってみせる。 深い緑色を基調とした聖ミリエラ女学院の制服。おとなしめのデザインをした服だが、ショートカットの髪をした活発な印象のかえでにも、不思議とよく似合っている。 「お兄ちゃんが一番動揺した格好だし、これで相手してあげるのが一番面白くなるかと思ってね」 「まったく、妙なことを考えるなあ。まあ、どんな格好をしていようとどうでもいい、今日こそは俺のもとに戻ってきてもらうからな」 かえでは開けた草地の真ん中に陣取っている。総太郎は数メートルの間を取って、彼女の正面に移動した。 「俺はあれから考えたが、お前のことは無理にでも連れ戻すと決めた。お前の斤木流は、ここにいる時間が長くなるほどに、本来のものとは別の形に変質しちまうだろうからな」 そして、そんなかえでがもし斤木流の当主となってしまったら、斤木流はもはや斤木流でなくなってしまう。父の残した流派へのこだわりが強い総太郎にとって、最も危惧すべき事態なのだ。 総太郎は構えを取る。半身になり、左足を前に出したオーソドックスなものだ。 「俺が勝ったらお前には即刻斤木流に戻ってもらう。いいな」 それを前に、かえでは笑みを崩さない。 「ふうん、それがお兄ちゃんの結論なんだ。いいね、わかりやすくて。そういうの嫌いじゃないよ」 かえでも同じような構えをとる。 「わたしが勝ったら、お兄ちゃんにはわたしに当主の座を譲ると明言してもらおうかな」 「いいだろう。俺がこうやってお前に挑むのは二度目だ、これでまた負けるようなら、どのみち俺は当主にふさわしくはないだろうからな。だが、そう簡単に譲るわけにはいかないぜ」 「そうこなくちゃね」 かえでは両目を閉じ、小さく息をつく。 どうやらかえでは緊張している。総太郎にはそれが伝わってくるが、総太郎とて同じ気持ちだ。 前回の悔しさはよく覚えている。幼い頃から身近で競い合ってきた相手であるだけに、絶対に負けたくないという気持ちも強い。本音を言えば、これ以上負けたくない相手はいないほどだ。 (子供っぽいかもしれないが、もう二度と負けたくはない) 冷たい風が吹き、背の低い草がなびく中、合図もなく勝負は始まった。 神倉流へと身を投じた後のかえでとは、これが二度目の勝負となる。 前回の敗北からはまだ一ヶ月経っておらず、記憶に新しい。最終的に紙一重で負けたような終わり方ではあったが、実際にはかえでの驚異的な強化に戸惑ったこともあり、明確な差をつけられて負けてしまったという感覚が総太郎にはある。 総太郎も強くなっている自覚はあるが、あの頃はかえでも秘法を覚えて間もなかったはずだ。今は体の感覚もこなれているであろうし、さらに動きが鋭くなっている可能性は高いだろう。 (今のかえでの実力は未知数もいいところだ。たぶん、かなり難しい勝負になるだろう) もしかすると冴華よりも手強い可能性もあるのだ。斤木流の技と神倉流の秘法のシナジーがどれほどのものであるのか。その真価をかえでが大きく引き出せているとすれば―― 「どうするか……」 総太郎はどう戦うか考える。未知数の相手に強気一辺倒では危険かもしれないが、かと言ってこちらから仕掛けなければかえでがやりやすくなるだけかもしれない。 そんな風に方針を決めかねていた総太郎の様子を観察していたかえでは、小さく腰を落とすと、すぐに攻めかかってくる構えをみせた。 「いくよっ、お兄ちゃん!」 「来るか!」 迷っているときではない。かえでから攻めてくるのであれば、いつも通りそれを受け流してペースを作り、勝負をコントロールして勝てばいいのだ。今の総太郎には、そうした戦い方を貫徹するために必要な技が身についている。 「たあっ!」 か
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回复(0) 点击(726) 2020-07-09 23:07:30   
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